「茶木みやこ 撰歌」復刻によせて セルフ・カバーのアルバムがあってもいいが、曲には生まれた当時の匂いがある。アーチストの技量も、感性も、その時代の匂いを持っている。1978年リリースの『茶木みやこ撰歌』には、まぎれもなく二十歳代の茶木みやこがそこにいるのだ。70年代。ファッションや文化、芸術、音楽、僕たちは、憧れるものを自分にとり入れるのに夢中だった。茶木みやこ自身もそうであったにちがいない。そして、彼女は音楽を通して自らの夢をカタチにしていった。いや、それほど計算高いものではなかっただろう。おもしろくて、夢中でやっていたら、そうなった・・というのが実感だったかもしれない。ピンクピクルスの活動はわずか1年余りだ。1971年、『僕にさわらせておくれ』『天使が恋を覚えたら』などの大ヒットを生みだしながら、翌72年には解散。その後、ソロになった茶木みやこはオリジナル曲『一人の道』で、その存在感が大きくクローズ・アップされ、ソング・メーカーとして、またシンガーとして、さまざまな活動を展開していく。77年、TVドラマ『横溝正史シリーズ』の主題歌『まぼろしの人』、第2弾『あざみの如く棘あれば』を発表。これらの作品により、それまでフォーク・ソングに興味のなかった層の人たちにも広くその名を知られることになる。それらの曲がTV放送時の演奏アレンジそのままで収録されたこのアルバムは、今でいうベスト・アルバム。1曲目の『泪橋』は、今もライブでは人気のナンバーだ。茶木みやこの若い声もいい。声だけではない。すべての曲から二十歳代の茶木みやこの感性が匂ってくる。この匂いこそが復刻盤のもつ大きな意味なのだ。 |
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